【絶望から希望へ:神戸刑務所編】担当部長は、奇人変人されど熱い心と人間味あるヤツだった!《さかはらじん懲役合計21年2カ月》
凶悪で愉快な塀の中の住人たちVol.34
◼︎奇人変人でもハートのあるオヤジ
初めのうちは、そんな担当部長に、工場の兵隊たちはいったい何事かと、一様に驚いて振り向いていたし、ボクもその甲(かん)高い声には肝(きも)を冷やした。しかし、慣れてくると、ああ、また始まったなと思うようになり、それがないと、オヤジ、身体の具合でも悪いのかなと、逆に心配してしまうようになっていた。
担当部長は絶好調だと、自分でも知らないうちに勝手に口が動き出すようだった。ボクの役席の裏側にある担当台でもときどき、用事があってやって来た兵隊相手に、
「お前、マクドナルドの店長になって、ワシを喜ばせや。そしたらお前の言うこと、ワシ、何でも聞いてやってもええぞ」と、訳のわからないことを言っては楽しんでいた。
また、就業後、工場の食堂内で、還房待ちで待機をしているボクたち懲役囚に、自分が休みのときに行った釣りの話や、「ぼうず」だったから、魚棚の魚市場で買って帰り、「ワシが釣ったんや」と言って家族でその魚を食べた話をしたり、「ワシ、家に帰ってもいつも一人で寂しくしておるンや。そんで家の犬に、『お前だけや、ワシの味方は』と言って、犬の傍に行きおったら、その犬、ワシの顔見て、『フン』とでもいうような顔して横向きおったんや。ワシ、飼い犬にまでバカにされてしもうて、とても寂しい思いをしたな」などと滑稽な話をしてくれたので、少なくともボク一人は心を和まされていたのであった。
担当はこうやって、一日の終わりに許す限りの自分のアホな話をして、懲役囚の荒(すさ)んだ気分を和ませていたのだった。
普段、担当は同じ看守仲間からも、遺憾なく発揮している奇人変人振りに、本気ともつかないような冗談で、「あいつはアホや」と言われて笑われたりもしていたが、気持ちが熱く、ハートのあるオヤジだった。
(『ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜つづく)
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2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。
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